「ってなわけで王子、愛しの姫借りてくねー」


いつもよりちょっぴり寒めの土曜日。

さっきまで熱気でいっぱいだったグラウンドの余韻が耳に残る、そんな、部活終わり。

早速着替えを済ませたあたしは、

大声を出しすぎたせいか少し枯れてしまった声で、にっこりと笑った。



「借りる、ね」


あたしの声を聞くなり不満そうに零したのは、なずなの王子、憐くん。


今日は、約束通りなずなとバレンタインの買い物をすることになっているから、そのことを伝えたわけだけど。


……そんな独占欲全開な顔しなくても。


「ちゃーんと返すから」


あたしはピースサインをしながらにやけてしまう。


だってさあ、なずなのこと大好きなのダダ漏れって感じじゃない?

そんなこと言ったら「別に」とか、不機嫌ハスキーボイスで言われそうだけどさ。

……や。どうだろ。


初めこそなずなの一方通行って感じだったのが、ここ最近ますます矢印の大きさが違って見えてきてるから……。