「じゃあねー」
なずなと別れたあたしは、誰もいなくなった演習室のドアを閉める。
戸締り施錠は、日々の当番制。
今日は、あたしがその当番だった。
「梓先輩っ」
ガチャリ、鍵を閉めたところで誰かに呼び止められた。
「美保ちゃん?」
振り返るとそこにいたのは紛れもない彼女で。
どうしたの、そう訊ねようとした刹那。
「鍵、持っていきましょうか?」
にこり、彼女は笑ってみせた。
気持ちは嬉しいけど……。
「いいよ悪いし。でも、ありがとね」
「いえ。……だけど、勝手に職員室までついて行かせてもらいます」
へ?
「実は私、先輩にずっと訊きたかったことがあるんですよ」
へ?
妖艶に唇に手を当てる美保ちゃん。
あたしは、突然のことに二段階で目を丸くしてしまった。