「怜佑!」


ま、まずい……。キレかかってる……!


怜佑──滝川(たきがわ)怜佑(れいすけ)は、あたしの同級生で同じ高校のクラスメイト。

見上げるほどに背が高く、髪は絵の具みたいに真っ黒で──。


「いつまでかかっとんねん」


そう!

一番の特徴は、この関西弁。

5歳まで兵庫県に住んでいたせいか、もう染みついて抜けないんだって。


案の定怒鳴られたあたしは、うぐっと顔をしかめる。


「だって、どっちもおいしそうなんだもん!」


言いながら振り向くと、もともとぱっちりとした少しつり気味のその目が、平たくなってあたしを睨んでいた。


はいはい、すぐに決めますよ~。

ぷくっと頬を膨らませるあたし。


すると、怜佑はそんなあたしを見るに見兼ねたのか、


「はあ」


大きな大きな溜め息をついてみせた。


いや、訂正。

息なんてかわいいもんじゃない。

あれは間違いなく、声だった。