「ったく、こんだけ俺を悩ませるんお前だけやぞ」

「なっ。なにそれどういう意味!?」


どういう意味も何も、得体の知れん感情にさせてくるヤツが悪いんやからな。


「ぬいぐるみもいいけど」

「え──」

「本物も忘れんなや?」

「っ!?」


カッと大きく開かれた瞼。

一点に定まらず左右に揺れる瞳。

じぃっと見つめる内に、その頬は熱でも出したかのように真っ赤に染っていって。


「……う、うん? えぇっ!?」

「はよせな遅れるでー」


固まったまま動かん梓にそう言い残し、スタスタと歩いていく。