「彼女と思ってないやつに、俺がこんなことすると思う?」

「えっえっと、そ、それは……」

「なんや、まだ足りんって?」

「い、言ってません、そんなことっ!」

「……まぁ、いいけど」


怜佑はそう言って、混乱するあたしを解放する。

とりあえず動けるようになったのはいいとして。

この火照った身体をどうやって鎮めようか。



「……そうや。お前に言っとかなあかんことあんねん」


静かに深呼吸をしてみたところで、怜佑がそんな声を響かせた。


「なに?」


と、首を捻ったと同時にポンと頭に手が乗せられ。


「ドーナツ、美味かったわ」

「……っ!」


ニイッと降ってきた柔らかい笑みが、あたしの時間を数秒奪った。