「……なんや、人の顔ジロジロ見て」

「んー? 別にぃ? ほら、早く行こー」

「わっ、ちょっ梓……!」


改札を出てすぐ、ぎゅうっと腕に抱きついたら怜佑のヤツが間抜けな声を出した。

でもあたしは知らんぷりで歩く。


「……あ、暑苦しいやろ」

「冬なのに? そんなこと言って、嬉しいくせにさー」

「は? 別に嬉しないわ」


カチン。


「ふーん……」


素直じゃないのが怜佑なのはわかってる。

けどちょっとくらい素直になってくれてもいいんじゃないの?


「そんなにあたしとくっつくの嫌なんだ」


あたしは露骨に不機嫌な顔を作りそう言うと、お望み通り腕を解放してあげた。

するとその直後、目の前の表情が焦りを帯びたものに変わって。