赤点をとって追試を受けたことも。

将来のビジョンが見えてないことも。


なにもかも母に知られる。

兄と違いすぎるわたしを見られる。

比べられ、ガッカリされる……。


「うらら、またあとでねぇ」

「うんっ」


架里奈と別れ、席についたとき


「おっす」


声をかけてきたのは、隣の席の田村くんだった。


「……おはよう」


架里奈と永浜くんを通じてしかほとんど話さない相手だ。

そういえば永浜くんと田村くんはクラスで人気の男子2トップだという話を最近耳にしたような、しなかったような。


「見たよ。今日も兄貴と仲良く登校か」

「え……うん」

「なんで?」

「へ?」

「なんでいつも一緒なの?」


そんなこと言われても……。

同じ場所に住んでいて目的地も同じなわけで。

一緒じゃないほうが不自然じゃないかな?


「わり、困るような聞き方した」ニッと笑うと「いくらイケメンでもあんなにシスコンだと息苦しくねーの?」と聞き直された。


兄がシスコン……?

シスコンって、妹だいすき的なやつ?


いやいや。そんな可愛いものじゃない。

きっと田村くんの想像するそれとは全然違う。