興奮しているのかテンションの高い和豆を促して、裏口の中に押しこんだ。外にいるとあっという間に日に焼けてしまいそうだったから。
「で、なんの話だったの?」
いつもの部屋に上がり腰をおろすと、冷たい緑茶を出してくれた和豆が、書類の束を見せてくれた。
「これよ、これ」
横書きの用紙の上部には【ならまち郊外地整備計画について】と記してある。
「整備計画? え、ここが整備されるの?」
驚いて尋ねると、茶粥を食べながら和豆がうなずく。
「手葉院が建っているこの小さな山はうちの持ち物なのよ。それを平地にして観光客用のショッピングモールにしたいんですって」
「へぇ」
そんな計画があるんだ……。手元の文章には、この山の権利を市に譲渡してほしい、ということが書いてあった。地図が書かれた用紙が二枚目にあって、見るとこの手葉院はけっこう広い敷地であることがわかる。
「このお寺はどうするの?」
「それはね、次のページを見て」
促されるまま三枚目をめくると、パソコンで描かれたと思われるお寺のイラストが現れた。立派な建物の横には『手葉院』と書かれた大きな看板が。山門だって、ずいぶん大きく見える。
「建て直す、ってこと?」
私の質問に、「そうなのよ〜」と甲高い声をあげて和豆は喜んでいる。
「しかもね、その場所がすごいの。奈良県庁のすぐ裏側にある土地なの。山の敷地面積の半分にも満たないけれど場所は一等地よ。そこと交換してくれるんですって!」
目をキラキラさせている和豆に疑問を感じた。
「そんなおいしい条件ある? ひょっとして騙されてるんじゃないの?」
「やあね。あたしは慎重派で有名なのよ。しっかり裏は取ってあるってば」
ふうん、ともう一度イラストを見た。たしかに古すぎるこのお寺は地震でも起きたら一瞬で崩れそうだし。
「でも、宣伝とかあまりしたくない、って言ってなかったっけ?」
「それはここが古いからよ。恥ずかしいじゃない、観光客に笑われるもの。でも、新しい場所なら期待できるわ。なんてったって東大寺のすぐそばなのよ」
そこで言葉を区切ってから和豆は「それに」と続けた。
「外国から来た観光客の殿方と触れ合えるチャンスじゃない!」
ひとりで盛り上がっている和豆は、ガツガツとおかずを口に運びながら言った。
「そっか。じゃあ楽しみだね」
「で、なんの話だったの?」
いつもの部屋に上がり腰をおろすと、冷たい緑茶を出してくれた和豆が、書類の束を見せてくれた。
「これよ、これ」
横書きの用紙の上部には【ならまち郊外地整備計画について】と記してある。
「整備計画? え、ここが整備されるの?」
驚いて尋ねると、茶粥を食べながら和豆がうなずく。
「手葉院が建っているこの小さな山はうちの持ち物なのよ。それを平地にして観光客用のショッピングモールにしたいんですって」
「へぇ」
そんな計画があるんだ……。手元の文章には、この山の権利を市に譲渡してほしい、ということが書いてあった。地図が書かれた用紙が二枚目にあって、見るとこの手葉院はけっこう広い敷地であることがわかる。
「このお寺はどうするの?」
「それはね、次のページを見て」
促されるまま三枚目をめくると、パソコンで描かれたと思われるお寺のイラストが現れた。立派な建物の横には『手葉院』と書かれた大きな看板が。山門だって、ずいぶん大きく見える。
「建て直す、ってこと?」
私の質問に、「そうなのよ〜」と甲高い声をあげて和豆は喜んでいる。
「しかもね、その場所がすごいの。奈良県庁のすぐ裏側にある土地なの。山の敷地面積の半分にも満たないけれど場所は一等地よ。そこと交換してくれるんですって!」
目をキラキラさせている和豆に疑問を感じた。
「そんなおいしい条件ある? ひょっとして騙されてるんじゃないの?」
「やあね。あたしは慎重派で有名なのよ。しっかり裏は取ってあるってば」
ふうん、ともう一度イラストを見た。たしかに古すぎるこのお寺は地震でも起きたら一瞬で崩れそうだし。
「でも、宣伝とかあまりしたくない、って言ってなかったっけ?」
「それはここが古いからよ。恥ずかしいじゃない、観光客に笑われるもの。でも、新しい場所なら期待できるわ。なんてったって東大寺のすぐそばなのよ」
そこで言葉を区切ってから和豆は「それに」と続けた。
「外国から来た観光客の殿方と触れ合えるチャンスじゃない!」
ひとりで盛り上がっている和豆は、ガツガツとおかずを口に運びながら言った。
「そっか。じゃあ楽しみだね」