キスがあのフライになっている魚だということはわかった。
だけど今朝、冷蔵庫にこのトレーはなかったと思う。それを言うなら、さっきの軟白ずいきも同じ。
いつの間に買い物に行ったんだろう?
疑問を解消しようと考えているうちに、
「ごちそうさまでした」
竜太さんは食べ終わったようだった。見ると、主菜の皿も副菜の小鉢ですら完食している。『卵浸しパン』以外のメニューで綺麗に食べたことなんてなかったのに。
「食ったか」
満足そうに言う雄也に、竜太さんは「はい」と答える。さっきよりもずいぶん顔色も良くなり元気になっているように思えた。
やっぱり食べることで人は元気になるものなんだ。
さっきの死にそうな顔から少しでも復活してくれたならうれしい。
「それは『キスの変わり揚げ焼き〜黒ゴマのヨーグルト味〜』だ。味はどうだった?」
雄也がそう尋ねたので、またしても驚いてその顔を見てしまう。
それは竜太さんも同じだったようで、
「え?」
と、今聞いたことが信じられないように聞きかえした。それもそのはず、雄也は自分の料理に絶対的な自信を持っていて、いちいち味の評価をもらったりしないから。
『おいしいのはあたりまえ。俺が作ってるんだから』とまで言っているくらい。
それがなぜ?
答えない雄也に、竜太さんは軽くうなずいた。
「すごくおいしかったです」
「どういうふうに?」
「え? あ、あの……。そうですね。野菜は苦手ですけれど、この軟白ずいきはクリームでその苦さがわからないほどでした。オクラも好きじゃないけれど味噌汁にとても合っていたと思います」
「魚は?」
おかしい。こんなに詳しく聞き出そうするなんて、絶対におかしい。
竜太さんだって同じように思っているのだろうけれど、そこはヘビににらまれたカエル。
「ヨーグルトと黒ゴマが合わさるとすごく和風な味になるんですね。間に挟んであった野菜も香ばしくて、それがとてもおいしかったです」
と、答えた。
雄也はその答えを聞いて満足するかと思ったが、表情を険しく変えた。
そうしてから腕を組むと、
「俺は納得できんがな」
と、言った。
ぽかんとする私たちに、雄也は味噌汁を指さす。
「オクラの色を見ろ。茹ですぎで緑色がぼやけているだろ。これじゃあ本来の味が消えちまう」
だけど今朝、冷蔵庫にこのトレーはなかったと思う。それを言うなら、さっきの軟白ずいきも同じ。
いつの間に買い物に行ったんだろう?
疑問を解消しようと考えているうちに、
「ごちそうさまでした」
竜太さんは食べ終わったようだった。見ると、主菜の皿も副菜の小鉢ですら完食している。『卵浸しパン』以外のメニューで綺麗に食べたことなんてなかったのに。
「食ったか」
満足そうに言う雄也に、竜太さんは「はい」と答える。さっきよりもずいぶん顔色も良くなり元気になっているように思えた。
やっぱり食べることで人は元気になるものなんだ。
さっきの死にそうな顔から少しでも復活してくれたならうれしい。
「それは『キスの変わり揚げ焼き〜黒ゴマのヨーグルト味〜』だ。味はどうだった?」
雄也がそう尋ねたので、またしても驚いてその顔を見てしまう。
それは竜太さんも同じだったようで、
「え?」
と、今聞いたことが信じられないように聞きかえした。それもそのはず、雄也は自分の料理に絶対的な自信を持っていて、いちいち味の評価をもらったりしないから。
『おいしいのはあたりまえ。俺が作ってるんだから』とまで言っているくらい。
それがなぜ?
答えない雄也に、竜太さんは軽くうなずいた。
「すごくおいしかったです」
「どういうふうに?」
「え? あ、あの……。そうですね。野菜は苦手ですけれど、この軟白ずいきはクリームでその苦さがわからないほどでした。オクラも好きじゃないけれど味噌汁にとても合っていたと思います」
「魚は?」
おかしい。こんなに詳しく聞き出そうするなんて、絶対におかしい。
竜太さんだって同じように思っているのだろうけれど、そこはヘビににらまれたカエル。
「ヨーグルトと黒ゴマが合わさるとすごく和風な味になるんですね。間に挟んであった野菜も香ばしくて、それがとてもおいしかったです」
と、答えた。
雄也はその答えを聞いて満足するかと思ったが、表情を険しく変えた。
そうしてから腕を組むと、
「俺は納得できんがな」
と、言った。
ぽかんとする私たちに、雄也は味噌汁を指さす。
「オクラの色を見ろ。茹ですぎで緑色がぼやけているだろ。これじゃあ本来の味が消えちまう」