一応そう言うが、答えはない。少し遅れて入ってきた竜太さんは、クーラーの涼しい風に少し安心したような顔をした。一日中町を捜索していたのなら、熱中症になっているのかもしれない。
「お座りください」
左端にはあいかわらずナムが座っているので、右端へ案内する。
すぐに手を洗ってから、おしぼりとお茶を用意した。
「冷たい飲み物はないわけ?」
まだ汗が止まらない竜太さんに七十度という熱いお茶は厳しいだろう。
けれど、
「あるわけがない」
そっけなく返されてしまう。
「……あれ? なに作っているの?」
油のたっぷり入ったフライパンで、雄也は衣のついたなにかを焼いていた。今日のメニューは鶏団子と春雨の煮物だったはず。よく見ようと近づくとフライパンの蓋を閉められてしまう。どうやら揚げ焼きにするらしい。
そういえばさっきから空気が香ばしい。
「準備しろ」
そう言って指さした小鍋では、見たことのない野菜が茹でられている。そうか、今朝あまり食べなかった竜太さんを心配して作ってあげているんだ。意外にやさしいところもあるじゃん。
「副菜は『軟白ずいきのクリーム和え』だ」
「あ、これが軟白ずいきなんだ」
唐芋系の芋であるずいきが大和野菜であることは本で読んで知っていたけれど、実物を見るのは初めてだった。芋が小さく幼いうちから新聞でくるんで、太陽の光を遮断して育てるため、紫色ではなく牛乳のように白色をしているとのこと。
名前のとおりクリームソースには黒ゴマが入ってるらしくさっきから小さな音を立てて沸騰していた。
器に入れた野菜にクリームをかけると、ほっこりとした甘い香りがして、さっき食べたばかりだというのにお腹がすくのを感じた。
フライパンからお皿に盛られたのは薄く衣のついた魚のフライ。そこに雄也は右手に持っている器からソースをかけた。白いそのソースは、まるでさっきのクリームソースと同じものに見えるけれど、匂いで違いがわかる。
「これって、ヨーグルト?」
「ああ。こっちにも黒ゴマを入れている」
盛られた二品は、かかっているソースが白色ベースに黒い斑点模様。
いつもは見た目にもこだわるのに、似たようなごはんを作るのは珍しい、と思った。
味噌汁を注ぐと、輪切りにしたオクラがたくさん浮いている。
「お座りください」
左端にはあいかわらずナムが座っているので、右端へ案内する。
すぐに手を洗ってから、おしぼりとお茶を用意した。
「冷たい飲み物はないわけ?」
まだ汗が止まらない竜太さんに七十度という熱いお茶は厳しいだろう。
けれど、
「あるわけがない」
そっけなく返されてしまう。
「……あれ? なに作っているの?」
油のたっぷり入ったフライパンで、雄也は衣のついたなにかを焼いていた。今日のメニューは鶏団子と春雨の煮物だったはず。よく見ようと近づくとフライパンの蓋を閉められてしまう。どうやら揚げ焼きにするらしい。
そういえばさっきから空気が香ばしい。
「準備しろ」
そう言って指さした小鍋では、見たことのない野菜が茹でられている。そうか、今朝あまり食べなかった竜太さんを心配して作ってあげているんだ。意外にやさしいところもあるじゃん。
「副菜は『軟白ずいきのクリーム和え』だ」
「あ、これが軟白ずいきなんだ」
唐芋系の芋であるずいきが大和野菜であることは本で読んで知っていたけれど、実物を見るのは初めてだった。芋が小さく幼いうちから新聞でくるんで、太陽の光を遮断して育てるため、紫色ではなく牛乳のように白色をしているとのこと。
名前のとおりクリームソースには黒ゴマが入ってるらしくさっきから小さな音を立てて沸騰していた。
器に入れた野菜にクリームをかけると、ほっこりとした甘い香りがして、さっき食べたばかりだというのにお腹がすくのを感じた。
フライパンからお皿に盛られたのは薄く衣のついた魚のフライ。そこに雄也は右手に持っている器からソースをかけた。白いそのソースは、まるでさっきのクリームソースと同じものに見えるけれど、匂いで違いがわかる。
「これって、ヨーグルト?」
「ああ。こっちにも黒ゴマを入れている」
盛られた二品は、かかっているソースが白色ベースに黒い斑点模様。
いつもは見た目にもこだわるのに、似たようなごはんを作るのは珍しい、と思った。
味噌汁を注ぐと、輪切りにしたオクラがたくさん浮いている。