「まさか、ずっと捜してたんですか?」

うなだれている彼の服装は朝のまま。シャツが汗染みを大きく作っていて、髪は額に張りついていた。

意識が朦朧としているのか、今にも倒れそうにその場で左右に動いている。

「仕事、お休みされたのですか?」

私の質問にぼんやりした視線を向けると、

「……そんなのどうだっていい」

と、言ってから表情をゆがめた。

「僕の、僕のせいなんだ……」

竜太さんはその場に力なく崩れ、膝をつく。

「しっかりしてください」

肩を支えると、竜太さんは頬に汗を流して目をぎゅっと閉じていた。ううん、これは涙だ……。

「僕が悪いんだ。僕のせいで千鶴は……」

嗚咽を漏らしながら後悔を口にする竜太さんに、私はなにも言えずにそばにいるしかできなかった。

「今さら気づいても遅かった。遅かったんだ……」

「まだわからないじゃないですか」

励ます言葉も安っぽく感じてしまう。私にはふたりがどれほど愛し合っていたのかわからないから。

根底に流れている深い愛が見えなくなって、ついないがしろにしてしまったのかもしれない。和豆がいたら客観的にアドバイスができるんだろうけれど、私には経験不足で力になれない。それが、切なかった。

打ちひしがれている竜太さんにかける言葉も見つからないまま、遠くにセミの声を聞いていると、振動音が耳に届いた。

竜太さんのポケットで震えているそれは……。

「あの、竜太さん。スマホが鳴っているみたいです」

言われている意味がわからないのかきょとんとしてから、ようやくポケットの震えに気づいたようで、黒いスマホを取り出した。

「きっと会社からだ……」

と、力なく言いながら画面に目をやった竜太さんは、

「え?」

小さな声でつぶやいてすぐに耳にスマホを当てた。

ひょっとして、千鶴さんが……?

期待に胸がドクンと鳴った。無意識に祈るように両手を合わせてしまっている。

これじゃあ亡くなった人みたい、と気づいてあわてて手を離した。

竜太さんは「もしもし!」とかじりつくようにスマホに向かって声を出してから、

「あ……はい」

と、敬語で話しだすから、電話の相手は望んでいた人ではないことを知る。