何時もよりも念入りに掃除をしたその部屋に
私が戻ってくることはこれから先、一生ないだろう。


私は彼にプレゼントしてもらった全ての物を残して
自分で用意したお金を持って、自分で買った服を着た。
私が気に入っていたアンティーク調の机の上に、真っ白な便箋を置いた。



「今までありがとう。さよなら」



貴方が何時も残した言葉を呟いて、私はこれからここを出る。


貴方に愛されたことが幻影だとしても、
私が貴方を愛したことは幻影じゃないから。
私はこれからその思いを抱いて強く歩いていける。



「大丈夫」



今度こそ、笑顔でそう言った。





fin.