五分経ったくらいから観察をやめた。

手持ち無沙汰になりしかも、起きる気配がないので、鞄から本を取り出し読み始める。

(こんなこと、二度とないんだろうな……)


つかの間の幸せな、重みを感じていた。












と、新しく読み始めた本が半分を超えた頃、


「っ……は?!」


突然目覚めたらしい王子が起き上がる。



「え?」

理系王子と目が合う。

なぜ、自分が膝枕状態で寝ているか不思議らしい。

そりゃそーだ。


「え?ご、ごめん……?」


「あ、すみません。起こすの可哀想だなーと思って膝、貸してました。」


「あーうん?なんで?俺?」


まだ状況が掴めないらしい。

「私、温かい飲み物買いに来て、ここに座ったら貴方がバタンと……」


「あーうーん?ごめん記憶にない。でもありがとう。」

困ったような、笑顔で理系王子は俯く。

「いえ、なんだか私も得した気分なので!全然です!」


まぁここで飲み物を飲む必要はなかったのだけど……それは秘密にしておこう。






「これで、おあいこだね。」



ぼそっと王子がつぶやく。


「ん?何か言いました?」


「ううんなにも。じゃあ俺行くわ。寝すぎた。」

「あ、はい。気をつけてください」


「また明日。」



優雅に、理系王子は去っていったが。



……また明日??


理系王子とは、偶然じゃないと会えないのにまた明日??

……誰かと勘違いしたのかな?


「あ、やば図書室閉まってるじゃん。いいや私もかーえろっと。」