(ああ、聞いておけばよかったなあ)

あらためて後悔した。

昼間、九ケ沼康子の言うことに聞く耳を持たなかった。でも、やっぱり、聞くだけは聞いておけばよかった。「変なもの」が出たとき、どのように処理すればいいのかを、教えてもらえたかもしれないのだ。

(今から九ケ沼さんに電話できないかな?)

そう思ったが、彼女の電話番号もLINEのIDも知らない。そもそも九ケ沼康子がスマホを持っているかどうさえわからない。

さんざんに思い悩んだあげく、

(考えすぎることはないんだ。単純に捨ててしまえば、それでいい)

そう結論した。

呪いの道具がベッドの下に置かれていたから悪夢を見た。だったら、道具を捨ててしまえばもう悪夢は見ないだろう。

沙樹は机の引き出しから、古くなったチラシの大きなものを取り出して、人形の胴体と頭部を包んだ。

そこで、ふっと思いついた。

(切られた頭をくっつけたほうがいんじゃないかな?)

それはとてもよい考えのように思われた。

人形の頭が切り取られたままでは、いくら捨てても呪いが続くかもしれない。頭をくっつけた上で捨てれば、呪いは無効になる。そんな気がした。

さっそく裁縫道具を取り出して、切られた首を縫いはじめた。裁縫は得意ではなかったが、別に美しく縫う必要はない。

不器用に縫っていき、ようやく首がつながった。

「できた」