衝撃的? 何がだろう……?

そう言えばあのスコールのような大雨の後、台風が来て……湖の水が警戒水位ギリギリまで増水して……湖近隣の住民に避難勧告が出された。

もしかしたそれの事?

首を捻りながらも「あの大雨で被害が出なくて良かったですね」と言うと、湖陽さんは何故か一拍置き、「――お陰様で」と答えてプッと吹き出した。

どうして笑うのだろう。今の会話のどこに面白要素があったのだろう……?

湖陽さんと気軽に話すようになって気付いたことがある。
彼は笑い上戸だ。

でも、彼の過去は笑えるようなものではなかった。

現在、彼は二十九歳らしい。家族は妹の夕姫さんだけ。ご両親は大学卒業を目前にして事故で亡くなったらしい。

この店はご両親が遺したものだそうだ。

夕姫さんがコッソリ教えてくれたのだが、本当は夕姫さんがここを継ぎ、農大生だった湖陽さんは、有機野菜を学ぶためにヨーロッパの大学に留学する予定だったみたいだ。

しかし、ご両親の死で予定は大幅に変わり、結局、湖陽さんは留学を断念して、この店を継いだそうだ。

――彼も運命に抗えなかった一人だったようだ。