青い瓦屋根に木調の白い壁。手入れの行き届いた深緑の木々。その足元を彩る色取り取りの草花。天然石の敷石が駐車場から流れるようにフロントドアまで続いていた。

スポットライトを浴びたようなその光景に、私の胸は震え、気付けば車を飛び出していた。

あの駆り立てられるような思いが何だったのか、今以て判明しない。しないが、あの時、あの光の中に私も入りたいと思ったのは確かだ。

そして……入ったからこそ、私はようやく心が凪ぐ場所を見つけたのだ。


*


チリリーンとドアベルが鳴る。心地いい音だ。

あの日、店に駆け入った私を出迎えてくれたのはこのドアベルの音と……柔らかな『いらっしゃいませ』の声だった。

スタッフであろう女性が、真っ白なタオルを差し出してくれた瞬間、驚きと同時に胸の奥が熱くなったのを覚えている。だが、情けないことにそれが誰だったかは覚えていない。

礼を述べた後、濡れた頬や髪を拭く私の目が、前方の窓に釘付けになってしまったからだ。

最初、私はそれを壁一面の絵画だと思った。

ダークグレーに染まる空の合間に見える青い空。光のシャワー。激しく波立つ黒い水と白い泡。何とも壮観だった。

あの感動が私をこの店の常連にしたと言っても過言ではないだろう。