『実はね、困っていたんだ』

イメージ通り、湖陽さんを怖いとかダークとか言う人も多いが、本来、彼は至極容姿の整ったイケメンさんだ。夕姫さん曰く、隠れファンというものが存在するらしい。

その内の何人かが、それこそチャレンジ精神剥き出しで、乙女の恥じらいも捨てて迫ってくるらしい。

『年々、大胆になってきてね、でも、お客様だしね、無下にあしらうこともできず、どうしたものかと思っていたんだ』

そんな中、降って湧いた交際疑惑。
使わない手はない、と湖陽さんは思ったらしい。

『それってストーカーですよね』
『そうとも言うかな』

過去、私もストーカーに苦湯を飲まされた経験がある。
それを助けてくれたのが、舜と海だった。

『私でお役に立てるのなら協力します。何でも言って下さい』

だから、当然のようにそう返事をした。

『うん、ありがとう。でも、何もしなくていいよ。今まで通りで。ただ、噂に関して、肯定も否定もせず、ダンマリを通してくれたら』

そうすることで、他者は勝手に肯定と捉えてくれるらしい。
そして、私も、下手な嘘を付き墓穴を掘らずに済むみたいだ。

『湖陽さん、悪知恵が働きますね』

褒めたつもりで言ったのだが、その時なぜか睨まれた。