だが、今ではいろいろバレて良かったと思っている。

「お待たせしました。ホットサンド三種とサラダ、それにカットフルーツとヨーグルト。夜中でも大丈夫なように軽めです。絶対に食べて下さいよ」

最後の『よ』に力がこもる。

こんな風に全く赤の他人の彼が、私の生死を心配してくれるのは、くすぐったいような変な気持ちがするが、悪い気はしない。

悪い気はしないのだが――。

「いつもお気遣い、ありがとうございます」

丁寧に礼を述べ、料金を述べよ、と目で催促するが、湖陽さんはニッコリ微笑み、「次回のお出でを楽しみにしています」とだけ言って受け取らない。

こんなことが何度かあり、ちょっとした誤解が生まれた。

『海里さんてチャレンジャーですね。怖く無いですか? 店長とのお付き合い』
『お兄ちゃんの相手ができるのは岬さんしかいません! 末長くよろしくです』

たちまち、私たちが付き合っている、と評判になった。

『どうします、これ』
『君さえ気にしないというなら、放っておかない?』

湖陽さん曰く、言い訳をするのが面倒なのと、それはそれで好都合なのだと言う。