そのK様からメールがきたのだ。『来週末に単発短編一本お願いします』という無謀なメールが!

来月初旬に長編一本、中旬にもう一本、そして、明後日までに短編一本を抱えているにもかかわらずにだ!

K様は知っているのだ。火事場の馬鹿力じゃないが、追い込まれた私が、実力以上の力を出すことを……。

本当にタチの悪い編集者様だ。
そう思いながらも、生活がかかっているので有り難く受ける私もバカだ。

そんなストイックな生活を、私は作家を稼業とした時からずっとしてきた。
それが快感でもあった。私はマゾなのではと本気で思ったほどだ。

だが、あの時は仕事に加えて見知らぬ土地への引越し、慣れない運転、と自分を追い込み過ぎたようだ。そして、それに気付かない私もバカだった。

今思うと、カフェ・レイクに着いた時には、既に気力体力共に極限だったと思う。
何時か確認することもなく……あの風景にただただ癒されたいがために店に飛び込んだ。

だからだ、店に入り、靄のかかる幻想的な風景を見た途端、倒れたのは……。