「あのさ、隆臣……」

「んあ?」


振り返り、口元だけで笑った直後。


「痛いって言ってるでしょうが!」


綺麗なその顔に一発、平手打ちをしてやった。


「いってっ!」


痛みに屈した隆臣は、掴んでいた手を自分の頬に持っていく。

周りにいた生徒たちが、派手な音にビックリしてこちらを向いた。


「私が女だってこと忘れてない?もうちょっと加減を覚えなさいよ!」


掴まれた腕がジンジンと痛む。


「俺様の大事な商売道具に何しやがる」

「自業自得だ、阿保!グーで殴られなかっただけでも有難いと思いなさいよね!」


彼に向かってこんなでかい口を叩けるのは、おそらく自分ぐらいだろう。


「千咲」

「まだ何か?」