「はあ……勉強か……」


下駄箱で靴を履き替えながら溜息吐く。


よくよく考えてみたら、勉強らしい勉強を今までちゃんとしてなかったかも……

授業も適当に聞いて、黒板に書かれた要点だけをメモ取るだけで予習も復習も全然やらなかったし。


でも“やる!”ってアイツに宣言しちゃった手前、今さら断るのも何かシャクだし、向こうからも“逃げ出すのはナシ”って言われたばかりだしな……


「溜息吐くと幸せ逃げんぞー」


下駄箱の戸を閉めて教室に向かおうとした私に、笑いながら声を掛けてきたのは柳隆臣だった。


「よぉ、千咲」


柳隆臣は近づくなり、私の髪をワシャワシャと掻き乱す。


「ちょっ……やめてくださいっ」

と彼の手を払い、手グシで髪を整える。


「何だ何だ!昨日の威勢はどうしたんだよ」

「別にいつもあんな感じってわけじゃないですから」

「堅苦しいなあ、その敬語」


“一応”先輩だから、気安くタメ語を使うのはどうかと……


「もしかして俺が年上だからって気にしてんのか?それなら要らない気遣いだな」


そう言って、今度は頬を抓った。