「幼なじみの枢だよ」

「ふうん……?」

「気さくで明るいから男女問わず人気あるんだよ。いつも喧嘩ばっかだけど、何だかんだで仲良いんだよね」


――って、私ってば何で篠宮くんに語っちゃってんの?!


「好きなの?」

「え?誰を?」

「だから、枢くん」


篠宮くんは無表情で言った。


“枢くん”という呼び方があまりにも不似合いで、一瞬笑いそうになってしまったのを必死に堪える。


「あり得ない、あり得ない」

「でもさ、もしかしたらひょっとしたことがキッカケで、恋愛感情に発展したりすることもあるんじゃない?」

「どうしたの、急に。篠宮くんってそういうキャラだった?」


人の恋愛ごとなど、絶対興味が無い感じなのに……


「――別に何でもない」


そう言いながらポケットに手を突っ込む。


「変な奴」


そう言って歩き出すと、電柱に貼られた一枚のポスターが目に入った。