「つーか、物事を言う前に自分の名前ぐらい言えっての!」

「さっきからお前、うるせぇよ……」


――えっ?


聞こえてきた声に振り返ると、誰も居ないと思っていた体育館の前に、知らない男が一人立っていた。


「……誰、あんた」


制服を思い切り着崩し、髪を金髪に染めた彼の右手にはマルボロの煙草。


ネクタイは自分と同じ学年色だが、全然見ない顔だ。


まあ、元々同じ学校の男子なんて名前も顔も覚えている方が少ないけれど、彼みたいな“特殊”な存在ならば嫌でも覚えているはずだ。


「自分の名前聞く前にお前から名乗れよ」

「2年D組の高城千咲だけど」

「高城千咲……へぇ、アンタが?」


名前を聞くなり、面白い物を見つけたような顔を浮かべた。