それからしばらくして、

予定の19時半を回ると同時に、打ち上げ花火が始まった。


花火が上がると、それまで会話を楽しんでいた観衆がみ皆、花火へと意識を集中させた。


「うわあ、綺麗……」


こうして外で花火を見るのは何年振りだろう。


いつも家のベランダから、一人寂しく見ているだけだったから、いつもと違って迫力が凄かった。



――――あ、


何気なく視線をひと組のカップルに移すと、彼氏の方が半ば強引に彼女の顔を引き寄せて――…


「キスしたいの?」

「へっ?」


顔をあげると、それを合図にするかのように環の顔が近付いてきた。


不意を突かれ、キョトンと目を丸くする。


「なっ……」

「同じこと、してほしいのかと思っただけ」

「誰もそんなこと思ってなかった!っていうか、誰かに見られたらっ……」

「みんなの意識は花火だから大丈夫。あのカップルだってきっとそう思ったんだろうけど」


フッと笑って環は口角を釣り上げる。