「愛美ならまだ支度してるよ」

「あ、ハイ。全然待つんで大丈夫っす」

「そう?ところで、今言ってた“気取る”ってどういう意味?」

「バタバタしてたとかまったくの嘘。とっくに神社に着いてもいい頃なのに、何でここに居んだ?って思ったけど、千咲さんと一緒に神社に行きたかったのかなーって」

「唯!」


恥ずかしそうに唯くんに怒鳴りかかる環。

偶然じゃなくて、タイミングを見計らってただけなのか……。


「千咲さん。兄貴、こんな奴だけどよろしくっす!」


唯くんは環の腕からスルリと抜けだすと、そう言って私の家のインターホンを鳴らした。


「……ったく要らないこと喋りやがって。二人が出てくる前に先に行こう」


少しだけ不機嫌になりながら、私の手を取る。


「――あ、言い忘れてたけど浴衣似合ってる。向日葵、すげーいい」

「ありがとう。あと、学校のみんなに付き合ってること知られてもいいの?」


こうやって手を繋いで歩いていれば、それを見かけた誰もが関係に気付く。


「いいの?って聞く方が可笑しい。俺は別に付き合ってること、隠すつもりなんてないよ」

「株が下がっても?」

「前から思ったけど、自分のこと見下しすぎ。自分のこと、あまり否定しない方がいいよ」

「……だって」