「勉強抜きで一緒に居たいのは俺も同じだから」


篠宮くんはそう言って、私の腕を力強く引き寄せた。


「それはつまり、私のことが好きってこと?」


篠宮くんと同じ質問を投げ返す。


「ここまでしてんのにそれを聞くの?」

「だだだだだって……鮫島さんに、私のことを聞かれた時“好きじゃない”ってハッキリそう言ったじゃん!」

「――ああ、アレか」


篠宮くんは少しだけ体を離し、


「本人にまだ伝えてもいないことを、他の人に言う必要はないと思ったからだよ。まさかそれを高城さんが聞いてたとは予想外だったけどね」


そうだったんだ……。


「――千咲」

「は、はいっ!?」


突然名前で呼ばれて、声が裏返る。


「って、呼んでもいい?」

「あ、うんっ」

「じゃあ……俺のことも名前で呼んで」

「た……、環」


何度か頭の中や心の中では“環”と呼んではいたけれど、口にすると照れくさい。