「バツだらけの答案が、一気にマルだらけだ」

「今までが尋常じゃなかったのよ」


里乃がそう突っ込む。


「隠れた本能ね」

「え?」

「昔から思ってたけど、千咲ってここぞっていう時は物凄いパワーを発揮するのよね。今回はそれがテストだったけど。まだまだ知らないあんたの本能が見えてきそうだわ」

「意味分かんない」


単純かもしれない。

けれど、これから返ってくるテスト結果が待ち遠しい。


『化学、87点!』


こっそりと携帯を取り出し、篠宮くん宛てに報告メッセージを送信した。


それから数日に渡って返ってきたテストは、どの教科も恐ろしいほどに良かった。


「あとは問題の数学だけか……」


――ガラガラッ、


緊張の瞬間。

教室のドアが開き、数学の教科担当が入ってきた。


もちろん片手には採点を終えた答案用紙が抱えられている。