一気に全身から力が抜け、椅子に腰を下ろす。


「彼女、何だって?」

「……別に何もない」

「まあいいけど。それにしても篠宮くんが付き合わない理由がこれで判明したわ。全部アンタのせいか」

「ちょっと私が悪いみたいな言い方しないでよっ」

「彼に告った女子はみんな振られてるんだよ?それがアンタだったなんて本当に意外すぎるじゃん?でも、淡い初恋か……そりゃあ勝ってこないわ」


ズズー、とストローの音を立てて里乃はジュースを飲みほした。



頭の中は、ハルちゃんの言葉でいっぱいだった。



『環とチィちゃん、別れ際にキスしたんだよ』



“覚えてないなら、それでいいよ”

“覚えてないのは無理もないか。小さい時のことだし”


篠宮くんがあの時、少しだけ機嫌が悪くなった理由が分かった。


――でも、

私のファーストキスの相手って篠宮くんだったのか……


そう思ったら、急に恥ずかしくなった。