「チィちゃんの引っ越し前日に、花畑で最後の別れをした時にチィちゃんが渡したんだって言ってたよ。離れていてもずっと傍に感じられるようにって……」


そんなことあったんだ……。

自分のことなのに、全然覚えていない。


「小学校、中学校と女子から圧倒的にモテてたのに一切彼女を作らなかったんだよ。それだけ環はチィちゃんのことをずっと忘れられずにいたんだろうね」

「付き合ったことないの?」

「うん、一度も」


意外だった。

少なくとも一度くらいはあるのかと……。


「いいこと教えてあげる」


ハルちゃんはそう言って手招きする。

私は彼女の背丈に合わせて中腰になり、口元へと耳を近づけた。


「実はね――…」

「……ええっ?!」


彼女の言葉があまりにも衝撃すぎて、声を上げずにはいられなかった。


嘘でしょっ……


「というわけだから、後は頑張ってね!素敵な報告待ってるから」


“じゃあね”と手を振り、ハルちゃんは友達が待つ席へと向かった。