****
「これが終われば後は楽しい夏休みだね」
参考書を片手に嬉しそうに里乃が言う。
「これが終わるまでが勝負なんだって」
「アンタの口からそんな言葉が出てくるなんて、今まで思いもしなかったなあ。一ヶ月前には無かった書き込みがこんなにたくさん。恋の力って大きいわ」
そう言われ、動かしていた手を止めて顔をあげると
「隠してるつもりだろうけど、もうバレバレよ?千咲が篠宮くんが好きなこと」
ニヤリと薄気味悪い笑みを浮かべた里乃の顔があった。
しばし彼女の顔をじっと見つめてから、私は溜息吐いてまた手を動かした。
「あ、否定しないんだ?」
「めんどくさい」
里乃はフッと鼻で笑うと、机の上に肘を付いた。
「夏休み、どうする予定?」
「……花火、見に行く」
70点以上が取れたらの話だけど。