篠宮くんは驚いた様子で椅子から立ち上がると、慌てて窓から正門の方に視線を向けた。

つられるように自分も目をやると、そこには制服を着た小柄な女の子が立っていた。


――あの子が電話の“小春”ちゃんかな?


『お前、何してんの?そっち行くからちょっと待ってろ』


電話を切ると、篠宮くんは自分の荷物をまとめ始めた。


「俺の都合で悪いんだけど、用事出来たから帰るよ」

「え?あ、じゃあ私も帰る!ここのカギ持ってないし!」

「――あ、そうか」


荷物をまとめると、図書室を後にした。



「小春」


正門に着くなり、篠宮くんは彼女の名前を呼ぶ。


「環、来ちゃった」

と、可愛らしい笑顔で手を振る彼女。

遠くから見ても可愛い感じの雰囲気があったけど、間近で見ると本当に可愛い……。


「こんな時間に何でひとりで来たんだよ。危ないだろ?」

「さっきまですぐそこのファミレスで友達と一緒だったんだけど、環がまだ学校に居ると思って真っ直ぐ来たの」

「来るなら来るって連絡一本ぐらい入れろよ」

「ごめんね」


彼女は謝ると、篠宮くんの斜め後ろに立っていた私に気付いた。