「この一枚やり終わるのに一時間か……前に比べたらマシになったけど、それでも時間かけすぎ」


解答を見ながらブツブツと呟く篠宮くん。


「でもまあ、この様子だとギリギリ70ぐらいか」


チェックしたプリントを戻すと、ところどころにレ点が入っていた。


丸のはずが増えただけでも、私としては満足だ。

でもギリギリと言われるともう少し頑張らないと、と思う。


勉強に対してこんな風に思うなんて、前なら絶対あり得なかった。

でもそれを変えたのは、篠宮くんなんだよね……。


「間違ったところをやり直したら、今度はこっちやって終わり」

「えーまだあるの?」

「“えー”じゃない。追い込み間に合わないって言ったはずだよ。解らないところをそのままにすると、もっと解らなくなる」

「うん。じゃあ、ここどうやって解くか教え――…」


~ブーブッ~


「篠宮くんのじゃない?」

「あ、本当だ。しかも電話」


篠宮くんが電話に出る。

ストラップ、まだ付けてくれてるんだ。



「もしもし、小春? ……は?」