――放課後、

私は数日振りに図書室を訪れた。


篠宮くんとの勉強が無ければ、授業以外では絶対に来ることがない場所。

閉まっているドアに手を伸ばし、そっと開けた。


「……遅い。自分から呼び出しといて後から来るとかあり得ない」

「ゴメン、ゴメン」


約束通りに来てくれた彼に、ホッと安堵の笑みが零れる。


「俺が見てない間もちゃんと勉強してたんだよね?」

「もちろん。隆臣が分からない所、丁寧に教えてくれたから大体の公式はバッチリだよ」


隆臣の名前を出した途端、彼のコメカミがピクッと揺れた。


「――あの人がどういう風に教えてたか知らないけど、俺は俺のやり方で見るから」

「意識してんの?隆臣のこと」


隣りの席に座り、荷物を床に置く。


「別に意識してない。後で比べられたりすんのは嫌なだけ。いいから早く始めるよ」


篠宮くんは一枚のプリントを差し出すと、自分の参考書に視線を落とした。