「今すぐ離さないなら、大声出すわよ!」

「出せるもんなら出せば?どうせ、カップルの痴話喧嘩ぐらいにしか思われねぇし」

「……ッ!」

「千咲ちゃんみたいな気の強い女程、キス一つでどうにでも出来ちゃうんだよなあ……俺の経験上」


そう言って口角を釣り上げる。


「だからさ、試しに俺とキスしてみようよ」


そう言って近づけてくる顔。


「ちょっ……やめっ……」

「――あれ?こんなところで何してんの?」


……え?


聞き覚えのある声に顔を横に逸らすと、篠宮くんが突っ立っままこちらを見ていたのだ。


「篠宮くん!」


この時ばかりは、流石に彼が“救世主”に見えてしまった。