「はあ、食った食った」


定食屋を後にすると、満足気に伸びをする先輩。


「お腹いっぱいになったことだし、俺は帰るわ」


先輩はそう言って一人先に定食屋の前から立ち去って行く。


「……なんか凄く自由気ままな人だね」

「睦(アツシ)は昔っからああいう性格だよ」


睦――、多分橋本先輩の下の名前だ。


「千咲、勉強の続きどうする?」

「うーん……今からまた学校に戻るのは正直めんどくさい……」

「だったら、俺ん家来るか?」

「えっ、隆臣の家?!」


言われた瞬間、サッと身を構える。


「……阿呆。別に獲って食おうってわけじゃねぇんだから、んな警戒すんなよ」

「だ、だって」

「母親がいるから安心しろ」

「……じゃ、じゃあ行く。もし変なことしたら大声で叫ぶからね?!」

「分かったから行くぞ」


隆臣はポケットに手を突っ込み、来た道の反対方向へと歩き始める。


――大丈夫だよね?