「それでここはこの公式を使ってだな……」


翌日から、私は隆臣のクラスで勉強を見てもらうようになった。


意外にも隆臣の教え方は分かりやすくて、苦手なはずだった数学問題がスラスラと解けていく。


「凄いね、隆臣。頭いい人って教えるのも上手なんだね」

「当たり前だろ?ほら、余計なことは言わなくていいから次の問題解けよ」


隆臣はめんどくさがらずに、私が解けるまで隣りで静かに見守ってくれる。

分からなくて手が止まると、それを合図にするかのように隆臣が「どれが分かんねーんだよ」と聞いてくるのだ。


「何かどんどん頭がよくなっていってる気がするよ」

「アホか。んな数時間やっただけで頭が良くなったら、誰も苦労しねぇっつーの」

「痛っ!」


“バコッ”と頭を軽く叩かれ、その痛みで顔が歪む。


「隆臣ってどうしてそうやってすぐに手が出るの?!」

「癖だよ、癖」

「そんな癖、早く直そうよ」


そのうち、体中痛みで悲鳴をあげるんじゃないか?

と少しだけ大袈裟なことを思った。