……え?


柔らかくて生温かい物が唇に触れている。


目を見開いたまま、呆然と立ち尽くす。


「――目ぐらい閉じなよ」


ようやく唇が離れ、篠宮くんは冷静な口調でそう言った。


「……っ、」


今――…


自分の身に起こった一瞬の出来事を把握すると、慌てて口を手で覆う。

それはまさに気が緩んでいた矢先の“不意”を突かれたキスだった。


「これで嘘じゃなくなっただろ?」


大人しくなった私をじっと見つめ、彼は少し首を傾ける。


「何で……」

「高城さんが“嘘は嘘でしかない”ってうるさいから」

と、理由になっていない返答をしてきた。


「好きでもないのに……好きじゃないのにこういうことしないでよっ」


手を振り翳した時。



「何で、そう言い切れるの?」


それを上手く交わすと、私の手を掴んだ。