「いたたた……」


段々と胃がキリキリしてきたが、そんな症状は教室にやってくると共にすぐに治まった。


「ちょっと聞いたよ?さっきまで柳先輩かと思ったら、いつの間に篠宮くんとキスしたの?」

「いや、そのことなんだけどさ……それはたんなるデマ――…」

「千咲のことだから、どうせまた変な噂だろうと思ったけど、篠宮くんが“そうだよ”って答えてたから本当なんだね!」


……え?

篠宮環が認めた……?


いや、認めるとか認めないとかそれ以前の問題なわけで。


――どうして?

何故“違う”って否定しなかったの?



*********


――昼休み。

ご飯を食べ終えると教室を飛び出した。


最初に向かったのは篠宮くんのクラス。

けれどそこに彼の姿がないことを確かめると、その次に向かった先は図書室だった。


……あ、居た。


図書室の机で一人、気難しそうな顔で本を読んでいる。

彼のところだけが何だか違う空気が流れているかのような、そんな雰囲気に包まれている。


――黙っていればカッコいいのに。