――――今何を言った?


“アイツとキスしたよ”


「……っ、」


すぐにバレてしまうことなのに、どうしてそんなことを言ったのか自分でも分からなかった。

ただ分かるのは、自分がとんでもないことを仕出かしたのではないかということだけだった。


トイレから出てくると、廊下に立っていた生徒たちが皆して私をジロジロと冷たい目で見る。

きっとさっきの“デマ”が一気に広まったのだろう。


「あの篠宮くんにまで手を出すなんて……」


そんなヒソヒソ話が聞こえてくる。

言いたいことがあるのなら、堂々と面と向かって言ってくればいいのに。


問題は篠宮環だ。

おそらく、篠宮環本人にも耳に入っているだろう。


“高城さん本人がそう言ってたんだけど、本当なの?”

と、鮫島杏奈が彼に真相を確かめるのは間違いないし。


ああ……、今日の放課後が怖くなってきた。