(詩織side)

玲菜ちゃんは葵衣に大きめの袋を私宛に預けた。

中を覗くと、いろいろある中で先に目が留まったのが指輪の箱のようなものだった。

「なに…これ?」

そのケースを取り出し、開けると…

中には、大きくも小さくもないちょうどいい大きさの、星形のサファイヤのピアスが入っていた。

「こ、これって…。青星だ。」

「青星って、あの恒星の青星か?」

旬が聞いた。

「うん。こういうのを専門に扱うお店の社長さんが教えてくれたの。

“玲菜はもし、自分に命よりも守りたい友達ができたら、あなたは青星だって言ってあげるの。青星は恒星の中で一番輝いている星なの。だから、私の一番の友達は誰よりも輝いているって言う証なの!って言ってたのよ。”

って、教えてぐれたの…!」

私は泣いてしまった。

「本当に詩織が大切なんだな。」

葵衣がそんなことを言った。

「え?」

私が問い返すと、葵衣は

「さっき、帰る時も詩織が水神に初めて来た時も言われた。
もし、詩織に何かあれば許さない。
私のいない間は、詩織のことを何が何でも守って。
頼んだよ。
ってさ。詩織は愛されてるね。」

葵衣の言葉を聞いてびっくりした。

玲菜ちゃんがそんなこと言ってたなんて。

袋の中にはまだあった。手紙だ。

「手紙…!」

そこに書いてあったのは

____________________

詩織へ

突然いなくなってごめんな!
実はさ、心臓がやばくて日常生活が困難になるくらいやばいんだ。

死ぬなら一人の方がいいし、見舞いも面倒くさいだろう?
だから、あえて病院も教えなかったんだ。ごめんな。

まぁ、これからは私がいないものとして生活しな。マンションにはずっと住んでていいからな。あと、私が死んだときの遺産は全部詩織のものだから好きに使えよ!

墓はいらねーから作ってねぇーし。

あとは、水神に任せてあるから美希ちゃんと仲良くしろよ。私のことは探すなよな。

私はどこに居ても、詩織の味方だ。

『僕がついてる。いつも。』

元気でな、頑張れよ!水神に守ってもらえ。

松井玲菜

____________________


「うそでしょ…?!玲菜ちゃん!うわぁぁぁぁぁぁぁん‼‼」

私は大泣きした。
周りのみんなはびっくりしたみたいだけど、そんなのお構いなしに泣いた。

5分後

少し落ち着き、冷静さを取り戻した。

「すいません。急に泣いたりなんか…。」

「ねぇ、詩織。その手紙見して。」

「うん。はい。」

私は、葵衣に玲菜ちゃんからの手紙を渡した。

葵衣は読み終わってから、私に聞いてきた。

「あのさ、玲菜って何の病気?」

「「「「「玲菜(ちゃん)が病気?!」」」」

「え?葵衣、そのことも知ってたの?」

私の後ろですごい殺気を放つものが一人…。

「龍生。殺気をしまえ。
嫉妬心まるわかりだぞ。」

「チッ」

旬が瞬時に指摘を入れてくれた。

「で?さっきから意味の分からない話をするな。
説明をしろ。葵衣の疑問が解ける度に、俺らの疑問が増える。」

旬の言葉に他の3人も頷く。

「えっと、超簡潔に言うと…。
玲菜は、あの伝説の最強の“鬼”で…」

「「「はぁ?!あいつが鬼?!」」」

「あぁ。」

美希ちゃん以外は納得した。

「で、美希を裏切り者に仕立て上げたのは嫌われるため。
端から、美希は信用されると確信があったんだろう。
最後に、病気。それが嫌われたい理由だと思う。」


みんなの顔が暗くなった。

「詩織。で、何の病気なんだ?」

葵衣の言葉に我に返り、質問に答えた。

「詳しくはわからないですけど、心臓の病気で、治すには高額なお金と治す技術、それに心臓移植のドナーが必要だそうで、中学の時にはもう、余命宣告を受けてたらしくて、最近はすごく危ない状態だそうです。

それに、今行っている病院には行ってないらしいですけど、脳にも病気があって、腫瘍があるらしくて手術適用外らしいです。」


壮絶すぎたのか、他の4人はもちろん葵衣ですら、絶句だ。

「あ、あの、みんなにお願いをしていいですか?」

「な、なんだ?」

旬が口を開いた。

「玲菜ちゃんの病院を探すのを手伝ってください!
お願いします!」

私の言葉に対して、初めに声を出したのは龍生だった。

「俺は手伝いたい」

龍生の言葉にみんなが賛成した。

「明日から始めるか。今日は疲れただろう。
明日に備えて休め。」

葵衣の言葉に甘えて、今日はみんな家に帰った。

(詩織side・END)
(詩織side)

あの次の日から3日間探し始めたが、手掛かりは何もない。

学校も退学してしまっていて、病気のことなどを先生が話した。

クラスの人たちは驚いていたが、私たちはそれどころじゃない。

あの日、家に帰ると玲菜の服やPC、バッグなどが消えていた。

本当に死を待つことしかできないの?

詩織は何も悪いことしてないじゃん。

神様は意地悪だ。

「詩織ー!手がかりを見つけたぞ!」

旬が走って向かってきた。

「ほんと?!どんな情報?」

「学校で、白衣を着たイケメンが玲菜を抱えて駐車場の方に消えていったって、その日職員室の前で見たってやつがいたんだ。」

「っていうことは、学校の先生なら知ってるってこと?」

「そういうことだ!行こう!」

これで、玲菜ちゃんに近づいてきた。

早く玲菜ちゃんに会いたい!
その思いが日に日に強くなっている。


でも、そう簡単には会えなかった。

先生に聞きに行くと、『その情報は言えない。』と言われた。

先生たちが知っているのは確か。

多分、れい玲菜ちゃんに口止めされているのだろう。

どこまでも計算高いなぁ!れいな玲菜ちゃんは…!

ピロリンッ!ピロリンッ!

LINEの音が聞こえ、画面を確認するとそこには玲菜ちゃんからのものだった。


「旬!玲菜ちゃんからLINE来た!」

「え?まじで?」

2人で画面を覗き込んだ。

内容は、

『探さないでっていったでしょ?』

それだけだった。

でも、その数秒後にまたLINEが来た。

『そこから近い大学病院だ。玲菜の悲惨な姿を見ても軽蔑をしないと言えるなら、来い。』


と…。悲惨な姿?そんなのどうでもいい!
玲菜ちゃんに会いたい。


「旬、みんなに連絡回して。
私たちは先に行こう。」


「あ、あぁ。」


私たちは急いで病院に向かった。

病院の受付あたりで、スラッっと身長が高くいかにもイケメンな感じの人が立っていた。

「あ、あの!」

「あぁ!君が詩織ちゃんか!玲菜から話は聞いていたよ!」

「あ、あの玲菜ちゃんに会わせてください‼」


「「俺たちも!」」

あとから、ぞろぞろときた。

これで、水神幹部全員揃った。

「じゃあ、まずは玲菜に会わせる前に病気の説明からする。

今、とても危険な状態だ。本人もほとんど寝たきりに近い状態。

新たに、心臓とは別の手術適応外の脳腫瘍が見つかった。

心臓は鼓動が遅く、血液の循環が悪くなっていて体が動かしにくくなってる。食欲もなく、やせ細っている。

大体のことを大雑把に説明した。

これを聞いてもまだ会いたいか?」


そんなの決まってる。

「「「「「「会いたい‼‼」」」」」」

全員一致で決まった。

でも、その先に待っていたのは恐ろしい現実だった。

ガラガラガラッ

「玲菜入るぞ。」

先生の言葉に玲菜ちゃんの反応はない。

シャー!

玲菜ちゃんを囲っていたカーテンが開くと、玲菜ちゃんの驚くべき姿が目に飛び込んできた。

その姿に私を含め、みな絶句した。

だって、あの華やかで美しかった面影はなく、点滴に繋がれている様は痛々しかった。

体は、やせ細っているなんて次元じゃない。

酸素マスクをしているが、息はしづらそうだ。

「こ、これが、あの生意気な玲菜か?」

あまりの違いに、雅也が無理やり絞り出した声でつぶやいた。

でも、私にはわかる。

この人は玲菜ちゃんだ。だって、私とお揃いのネックレスをしているから。

「玲菜ちゃん‼私!詩織だよ?わかる?」

玲菜ちゃんは意識はあるみたいだ。

「し…、お………り…?」

途切れ途切れの声で返事をしてくれた。

「こ……な、く…………て、も、い………い、……て………い、たの……に……。」

「ごめんね。どうしても玲菜ちゃんに会いたくて…!
さがしちゃった!」

私が、泣きながらおちゃらけて言うと、玲菜ちゃんは少し微笑んで、

「はぁ、…ば………か、だ……ね。」

玲菜ちゃんの呼吸が少し荒くなってきた。その時、

「面会は終了だ。」

先生が言った。当たり前だろう。玲菜ちゃんの体が一番だ。

「あの、先生。玲菜ちゃんの今の状態をもっと詳しく教えてください。」

「わかった。外出ろ。」

外に出ると、深刻な顔をして話し始めた。

「みただろう?あの姿。
もう少しで玲菜は死ぬ。脳腫瘍は既に手術のできない状態になっていて、根治は無理だ。

心臓は、アメリカの大病院なら5%の確率で治せる医者はいるだろう。でも、アメリカの大病院の金額は膨大だ。

もし、お金を工面できても、今の玲菜じゃ飛行機なんてもってのほか、この場から動かすのも危険だ。

アメリカに行けても、ドナーが見つからないと意味がないから。
玲菜の場合、治すまでの障害が多すぎるんだ。

玲菜は覚悟を決めたみたいだ。

死を待っている。」


「なに…。それ?私たちはのうのうと玲菜ちゃんのことを忘れて生きて行けっていうの?!」

病院に来て初めて美希ちゃんが喋った。

「本当に、このまま何もできないの?」

「あぁ、手は尽くした。ドナーも、アメリカの病院もお金も。
でも、手術をやってくれる医者がいなんじゃ無理なんだ。
成功する確率は、0%に等しいんだ。

悔しいけど、もう後は何もしてやれないんだ!

俺だって何とかしたいよ!でも、できないんだよ…。」


全員が泣いていると、

「久本医院長‼松井玲菜さんの容態が悪化しました‼」

その言葉で、先生の後に続いて玲菜の病室に急いだ。

ガラガラガラッ‼

玲菜の病室に入ると、規則的にピーッ!ピーッ!と鳴り響き、機械が赤く光っていた。

その状況は医療の分からない私たちにもわかるくらい十分すぎる情報だった。

「君たち、一回病室から出てね。」

看護師さんに追い出され、中の状況がわからない状態だ。

でも、ずっとピーッ!ピーッ!となっているのが聞こえる。

音が止まり、私たちは一安心した。

ガラガラ

病室から出てきた先生の顔に色はない。

先生の言葉を待つ。

「すまない、全力は尽くしたんだが…。
病室に入っていいぞ。」

みんな、病室に駆け込んで中にはいたが、死んだのだと一瞬わからなかった。もしかしたら、と言う期待を込め、玲菜ちゃんに近づいて声をかけた。

「玲菜ちゃん?起きてるよね?」

そう聞いても、さっきのような返事は帰ってこない。

「ねぇえ!玲菜ちゃん?起きてよ!!
玲菜ちゃん!おきてよ!玲菜ぢゃん!うわぁぁぁぁぁあ!」

私は泣き崩れた。

他のみんなも泣き崩れていた。

「玲菜ぢゃん‼」

そこからの記憶なんてない。

唯一覚えているのは、玲菜ちゃんのお葬式で呆然と1枚しかなかった玲菜ちゃんの笑っている写真くらい。

水神の人たちも同じだろう。

お葬式も何もかも先生に任せっぱなし。

理由もなく、ただただ水神の倉庫で呆然とする日々が続いた。

2日くらい経ってから、先生が水神の倉庫に来たんだ。

大きな大きな荷物を持って。

その荷物の正体は、玲菜ちゃんがまだ動けたときに、PCで私たちが玲菜ちゃんを探していることを知って、自分が死んだ後に渡すつもりの贈り物だった。

中には、1人ずつ手紙とブレスレットが入っていた。
これも、特注品なのだろう。それぞれの誕生石を調べ、水神の下っ端も含め全員分。色違いで入っていた。幹部にはブレスレットと誕生石のピアスが入っていた。

先生は、万年筆とネクタイとネクタイピンだったそうだ。

全員に向けての言葉が先生によって告げられた。


________________________________________

みんな。腐ってるんじゃないだろうな?!

私が死んで腐ってたら許さないからな!

みんなは悔いのない人生を送ってください!


旬、家のこと。けりをつけなさい!

雅也、好きなら私みたいに後悔しないようにはっきり言いなさい!

葵衣、いい加減真面目にしろ!その腹黒ドSはマジでムカつくんだ!

美希、本当に申し訳ないことをした!素直になれ!

孝介先生、さっさと結婚しないとやばいんじゃね?

龍生、言えなくて後悔しています!龍生のことが大好きです!言えなくてごめんね!

詩織、詩織も素直になりなさい!あの家、あと30年住めるから!がんばって!


みんなはいろいろ経験してきているから、どんな人の立場でもわかるはずです。

やりたいことは諦めず挑戦してください。私はみんなの味方です!

残りの人生頑張ってね!勝手に死んでごめんなさい!

ありがとう。

松井玲菜

________________________________________


また泣き崩れて、みんな正気を取り戻し、みんな初の玲菜ちゃんのお墓参りに行くことになりました。


(詩織side・END)
(詩織side)

みんなで、お墓参りに来る予定でしたが色々忙しいみたいなので私一人できました。



ねぇ、玲菜ちゃん!

報告が色々とあります!


龍生も玲菜ちゃんのこと好きだったみたいだよ!

それとね、美希ちゃんと雅也が付き合うことになって、私も旬と付き合うことになったの!

それとね、私たち全員医療関係に就こうと思って勉強中です!

私のお母さんの会社は秘書さんに渡しました!

実は、秘書さんと久本先生が今度結婚するんだよ!
意外だった(笑)

で、私と美希ちゃんは看護師になろうと思ってて、旬は外科医で雅也は内科医になるんだって!

そして葵衣は、麻酔科医だって‼

最後に、玲菜ちゃんが一番知りたいであろう龍生は旬と一緒の外科医!

玲菜ちゃんのように手術適応外をなくすんだって!

玲菜ちゃん愛されてるねぇー!

まぁ、大体の報告は終わりかな?

つぎはみんなで来るから!

じゃあ、いつまでも見守ってね!

(詩織side・END)

『訳アリ女子高生』

を最後まで読んでいただいて、ありがとうございます!

初めまして!藤野 薺です!


この小説は、元々短編のはずだったんですが書きたいことが多すぎて、とても長くなってしまいました。


途中、とても雑なシーンがあると思います。

それは私がこの小説の内容に飽きてしまいまして、手を抜いてしまいました。申し訳ございません!

恋愛要素の少ない作品となってしまいました。

つぎは、ラブラブな作品を描けるよう頑張ります!


時間はかかると思いますが、また色々書きたいと思っているのでどうか、よろしくお願いします!


感想や、指摘なんでもお待ちしています!

最後まで私の小説にお付き合いいただきありがとうございました‼

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