僕はツナ缶を食べ終えると乗っけていたお皿を頭で少しずつ押して立樹にしらせようとする。



足元まで持ってきて僕は「ニャー」と鳴く。



「ん、こら。足元に居たら踏んじゃうよ?あ、お皿持ってきてくれたの?」



そう言って立樹はお皿を持つと同時に僕を撫でてくれた。



「もう少し待っててね。そしたら一緒に遊べるから。」



そう言ってお皿を洗ってる。



僕はソファの上によじ登りさっきまで遊んでいた手毬をコロコロ転がす。



手毬はコロコロと転がって色んな方向に行ってしまう。



するとソファから落ちた一つの手毬が廊下に出てしまう。



僕は追いかけて行くと不思議な部屋があることに気づいた。



そこには机や棚に手毬がビッシリ並んでいた。



雑貨屋とか八百屋とかと同じような雰囲気の部屋は電気がついてなくて真っ暗だ。



「こら。どこに行ったかと思ったら…」



そう言って立樹が僕の事を抱き上げる。



「家が気になったの?ここの部屋はお店として使ってるんだ。」



ここでは手毬が売ってるんだな。



「明日お店開くからその時に一緒に見ようね。ほら。手が空いたから一緒遊ぼう?」



そう言って三つほどの手毬を転がしてくる。



つい手毬をパシッと弾き返してしまう。



するとその手毬と僕の事を抱き上げリビングに連れていかれてしまう。



明日また見れるからいいかな?



僕はまたソファの上で立樹と手毬で遊ぶ。



立樹はどんどん手毬を転がしてきて僕はそれをはじき返す。



なんかキャッチボールしてるみたいで楽しかった。



カラフルな手毬がコロコロ転がってくるのも見てて楽しかった。



外の大雨の天気なんか忘れられるくらい部屋の中にはひだまりのような雰囲気があった。

僕が目を覚ますとあったかいクッションの上に僕はいた。



きっと立樹が寝かせてくれたんだろう。



ふわふわしてて暖かかった。



窓の方を見ると朝日が差し込んでいて綺麗な青空が見えていた。



まだ立樹は起きていないのかな?



僕は猫だから時間わからないしとりあえず窓の近くの棚によじ登って空を見る。



昨日の大雨が残した水たまりには青空がうつっていてきらきらと輝いている。



「朝早いね~おはよう。藍くん。」



そう後ろから聞こえる。



立樹が起きてきたんだ。



「まだ6時だよ。せっかくだから一緒に買い物行こうか。」



そう言って立樹は着替えてきて僕をバックの中に入れて外に行く。



昨日は周りを見てなくて気付かなかったけどもうたくさんのお店が開いていた。



商店街の途中にある家だったようで外に出た瞬間から人の明るい声が聞こえた。



僕はバックから顔を覗かせながら周りを見回す。



「明るいだろう?もう少ししたら目的地に着くよ。」



そして着いたのは小さな商店。



看板には…『橘商店』と書かれている。



「おばさん。いる?」



そう声をかける立樹に首を傾げながら見ていると奥の方で「はーい」という声が聞こえる。



すると奥から明るく笑うおばさんが来る。



「立樹君じゃない!どうしたの?…あら?この子猫ちゃんは?」



「確かネコ缶みたいなの売ってなかったかな~と思ったんだ。この子は藍くん。昨日拾ったんだ」



「あら!可愛いじゃない!立樹君のお店の看板猫ちゃんになるのかしら!ネコ缶ならあるわよ!」



「ありがとうおばさん。」



そんな会話をしていた。



明るく話す立樹とおばさんは買い物を終わらせると別れる。



「これで藍くんのご飯が用意出来たね。今まだ7時だから…あと3時間後かな。」



何のことだろう…?



そして僕達は家に帰って朝ごはんを食べ終わると昨日行った部屋に向かう。



すると立樹はシャッターをあけてお店が明るくなる。



「ここは僕がやっている手毬屋さんなんだ。藍くんは今日から看板猫になってもらうよ。」



僕は意味がわからなかった。



「っていってもとりあえずこの店の中にいてくれればいいんだけどね。」



そう言って緑色でふかふかのクッションをお店の棚の近くに置いてくれる。



「仕事はこのお店にいるだけ。簡単だろう?僕は基本ここに座っているから。」



そう言って一つの椅子を指さす。



「開店は10時だよ。もう少ししたら色々なお客さんが来るからね。」



そう言って僕をクッションの上に乗っける。



その周りには僕が遊ぶ用の手毬を沢山置いてくれた。



「あ、そうだ。藍くんにプレゼントがあったんだ。」



そう言って2階に取りに行く。



帰ってくると立樹の右手には一つの手毬があった。



すると僕の方に転がしてきてくれる。



「ほら。ここに来たお祝い。藍くんをイメージして作ったんだ。」



その手毬を見ると今まで遊んでいた手毬より大きくて僕が遊べる丁度いい大きさだった。



色は灰色でその糸の下に黄色と黄緑の糸で縫ってある。



僕の毛と目の色と同じだった。



「藍くんのイメージにぴったりだろう?ここに置いておくから遊んでいいよ。」



そう言ってクッションの上に置いてくれた。
ちょっと日も高くなり始めた頃。



さっきより暖かい空気の中僕はクッションの上の手毬で遊んでいた。



今開店時間になったらしい。



ドアを全開にして人が入れるようにしていた。



「開店したよ。これからお客さん来るから藍くんも頑張ってね。」



そう言ってカウンターの方へ行ってしまう。



すると最初に来たのは女の子とそのお母さんだった。



「ねーねー!猫さんがボールで遊んでるよ!」



「そうね。せっかくだから見ていきましょうか。」



そう言ってお店の中に入っていく。



「いらっしゃいませ」



立樹は女の子にもこんにちはと言って話している。



でも女の子はお母さんと立樹の会話に飽きたのかしゃがんじゃった。



どうしたらいいかな…



そう考えていると僕のクッションの上に乗っかっている手毬を思い出す。



大きさ小さいけど遊べるかな?



そう思いながら灰色の手毬をコロコロ転がして女の子の方にちかづける。



「ニャー」と鳴いて女の子に遊ぼうと言う。



聞こえないだろうけど。



「遊んでくれるの?」



そう言って手毬を持つ。



僕はほかの手毬も女の子の方にコロコロ転がしていく。



「猫ちゃん可愛い!私も遊ぶ!」



そう言って僕に手毬をコロコロこ転がしたり少しだけポンポンと弾ませたりしてくれる。



「わー!楽しい!猫ちゃんボール遊びじょうず!」



手毬をコロコロ転がしながら眩しい笑顔でわらってくれる。



それが嬉しくて僕はどんどん転がしていく。



「お、藍くん仲良くなったの?」



突然立樹の声が聞こえてきて体を弾ませる。



話終わったのかな?



「そうなの!猫ちゃんが遊んでくれたの!」



そう笑いながら女の子は言う。



「猫さん偉いわねー。ありがとうね?私の娘の遊んでくれて。」



そう言って僕の頭を撫でてくれる。



「私も手毬ほしい!猫ちゃんと同じように遊びたい!」



そう言って楽しそうに棚にある手毬を選んでいく。



「この子は藍くんって言うんです。昨日僕の家に来たんですよ。」



「そうだったんですか。私の娘は猫が好きで…遊んでもらって嬉しかったんだと思います。」



そう言って手毬を入れた紙袋を受け取る。



「ねー!おじさん!また猫ちゃんに会いに来ていい?」



そう立樹に聞いている。



「いいと思うよ。藍くんも楽しそうだったからまた遊んであげて?」



そう言って僕の事を抱き上げて僕の腕を振る。



「らんくんって言うの?じゃあまたくるね!らんくん!」



そう言ってその親子は帰っていった。



「初仕事どうだった?」



そう抱き上げられたま聞かれる。



「凄くじょうずな接客だったよ?お友達も出来てたね。」



そう僕の事を褒めてくれる。



「じゃあ次のお客さん来るかもしれないから藍くんまたお仕事がんばってね?」



そう言って立樹はカウンターの方に行ってしまう。



でもあの子楽しそうにしてくれたな。



ちょっと嬉しかった。



僕はクッションを外に引っ張りだして日向ぼっこをしながらお客さんを待っていた。



次はどんなお客さんが来るんだろう。
その日はお客さんも沢山来てくれた。



おばあちゃんやおじいちゃん。



小さい子供までたくさんの人が来てた。



まだお昼くらいだけどお店の中には僕と立樹とお客さんがいる。



お客さんは青と水色と白の手毬を取ってカウンターに行く。



そして立樹はそれを紙袋に詰めてお客さんに渡す。



するとお客さんは笑顔で僕を撫でてお店から出ていく。



その繰り返しだったけど…見ていて飽きなかった。



「さぁ。お腹空いただろう?お昼ご飯にしよう。」



そう言ってお皿の上に朝買ってきたネコ缶の中身を出して僕の前に置いてくれる。



「藍くんはお客さんに攻撃なんかもしないし暴れたりなんかしないから偉いね。僕が猫だったら棚にある手毬とかひっくり返しそうだよ。」



そう言って食べてる僕の頭を撫でる。



「閉店は4時だよ。今1時だから…後3時間弱かな?」



この時間までにもうお客さんは20人くらい来てたのにこれからまだ来るんだ。



さっきみたいに僕と遊んでくれる人居ないかな。



「お昼からは幼稚園の帰りがあるからきっと沢山のお客さんが来るよ。」



また子供が来るの?



そしたら遊んでくれるかな…?



「あと1時間後に沢山の人が来るからね。藍くんもお仕事頑張ろう。」



そう言って立樹はカウンターに戻る。



僕はご飯が乗ってたお皿をずりずりと押したり引っぱったりしてカウンターの裏に置いてクッションの方に戻った。



僕はまだ人が来てなかったから日向ぼっこしながら手毬をコロコロ転がして遊ぶ。



この天気には似合わないような灰色と黄色と黄緑の手毬。



だけど灰色なのに鮮やかで曇ってなんかいなかった。



この手毬は遠くから見るとそらが曇ったような色しているけどよく見ると雲のすき間から日差しがさしてるみたいに暖かい。



そんな手毬を前足でコロコロ転がしながら次のお客さんを待っていた。



すると次に来たお客さんは若い女性の人だった。



「すいません。プレゼントにオススメの手毬をおしえてくれませんか?」



そう立樹に聞いてた。



「プレゼントですか。どんな手毬がいいんですか?」



「ちょっと濃い色の手毬が欲しいんですけど。」



その要望を聞くと立樹は手毬を探していく。



立樹が選んだのは深緑と緑の手毬。



でも女性は欲しいのはこれじゃないみたいだった。



僕はクッションの上に乗ってる手毬を見つめて濃い色を探し出す。



すると藍手毬が目にはいる。



これならと思って持っていこうとするけど…遊んだものじゃだめだよね。



そう言って棚を見てみる。



すると結構高い位置に藍手毬が1個あった。



多分1mぐらいあるだろう。



僕は近くにあった机や棚を利用してそこまで登ろうと頑張る。



手毬の乗ってる棚を足場にして藍手毬がある所まで登る。



登りきって藍手毬を頭で押す。



棚から落ちた藍手毬は床に落ちてポンポンと跳ねる。



「藍くん。そこは危ないよ。それに棚から手毬を落としたらだめだろう?」



そう言って立樹は僕を抱き上げて棚から下ろす。



立樹は落ちた手毬を拾う。



「もしかして藍くん…これをお客さんに教えたかったの?」



そう聞いてくる立樹に僕は「ニャー」と鳴く。



「濃い青色の手毬…これ猫ちゃんが選んだんですか」



「藍くんが勝手に。きっと濃い色の手毬と聞いてこれを思い出したんでしょうね。」



そう言って立樹は僕が落とした藍手毬を女性に差し出す。



「これにします!猫ちゃんが考えてくれたんですし!紺色の手毬も綺麗です。」




女性は気に入ったように藍手毬を受け取る。



「これは藍手毬と言うんです。この猫の名前も藍くんで名前はこの手毬から来たんですよ。」



「へぇ…藍くんね?選んでくれてありがとう!」



そう言って女性は僕を抱き上げてくれる。



女性は手毬を受け取って「また来ますね!」と言ってお店から出ていった。



「藍くんありがとう。藍手毬を選んだのは正解だったみたい。今度から藍くんのオススメも取り入れてみようかな?」



僕は「ニャー」とないてやりたいと言う。



聞こえてないんだろうけど。



「そっか。じゃあ今度から藍くんのオススメも聞こうかな。」



僕のお仕事は看板猫と猫のオススメをやる係になった。


お店も閉まってもう暗くなってきた頃。



立樹のお店もシャッターを閉めて僕達は家のリビングに行く。



「お疲れ様。今日の仕事は終わり。また明日お仕事をするからね。藍くんにもまた看板猫として頑張ってもらうよ。」



そういって立樹はキッチンに行く。



僕はソファの上にあるクッションが気に入ってるからその上によじ登る。



「藍くんお疲れ様。頑張ってくれたから僕からご褒美あげるよ。」



そういって手に持ってる紙袋の中から水色のふわふわした猫じゃらしが出てきた。



僕はつい見てからすぐ遊びたくなって立樹の元へ駆け寄る。



「ほら。一緒に遊ぼう?」



そういって僕の近くで猫じゃらしを振ってくる。



ふわふわした綿には細いリボンもついていてなんとも魅力的な遊び道具だった。



僕はその猫じゃらしを捕まえるために前足でパタパタやったりクルクル駆け回ったりした。



立樹はそれをみながらふわりと微笑んでいた。



そして僕はもっと立樹とあそびたかったから猫じゃらしから離れてクッションの方に向かう。



「あれ?飽きたの?」



そう聞いてくる。



僕は立樹が作ってくれた灰色の手毬を前足で転がして立樹の所まで持っていく。



「今度は手毬で遊びたいの?手毬を転がしてきて…かまって欲しいんだろう?」



そういって僕に手毬を転がしてくる。



僕はその手毬を前足で弾き返す。



そうやって遊んでいるうちに外はもう真っ暗になっていて少し涼しい風が部屋に入ってきた。



「もうお腹空いたよね。ご飯にしようか。」



そういってネコ缶を開けてお皿に入れてくれるけどそのお皿を立樹は窓際に出した。



「食べてていいよ。僕もすぐにそっちに行くからね。」



そういって立樹は自分の夕飯を取りに行った。



立樹が帰ってくるまでは食べるのを我慢してた。



「あれ。待ってなくて良かったのに。じゃあ一緒に食べようか。」



立樹は「いただきます」と言ってお皿に乗ってる野菜炒めを食べ始める。



僕は何故窓際で食べるのか気になって仕方なかった。



そして僕は窓ガラスを前足でぺたぺたと触って何かあるのかと聞く。



伝わるといいけど…



「ん?外に何かあったかい?」



そういって窓の外をみる。



「今日は月が綺麗だろう?満月だから。…もしかして何でなのか気になってたのかな?」



そう聞かれたから「ニャー」と鳴く。



「気になってたのか。たべながら綺麗な月を見るなんて少し贅沢だと思わない?」



そう言いながら立樹はご飯を食べてる。



僕はなんかこんな日もいいなって思いながらネコ缶を食べる。



月のおかげか今日の夕飯は美味しく思えた。

お皿の中はすっかりからっぽ。



立樹のお皿の上にも何もなくてすっかり完食していた。



僕はいつも通りお皿を洗う所に頭とか前足とかでお皿を押していく。



立樹はそれを回収してお皿を洗う。



立樹がお皿を洗ってる間僕は窓際でずっと月を見てた。



前まで満月でもこんな綺麗に見えなかったのに今はキラキラと輝いて見える。



これも立樹のおかげなのかな。



ずっと窓際に座って窓の外にある月をみる。



この家は前までいた道路とかそんな所よりちょっと狭いはずなのに退屈しない。



前は外にいても退屈で仕方なかったのに。



こんなに楽しく思えるのは初めてだ。



外の世界で遊んでいても全然楽しくなかったのに。



窓という薄いガラスがあって外に出れないけど外に出ようなんていう気にもなれない。



だってここに居るのが凄く楽しくて嬉しくてしかたないから。



これも全部立樹のおかげなのかな。



こんな灰色で薄汚かった僕を温かく迎えてくれた。



こんな何も出来ない僕に楽しい事を教えてくれた。



手毬や猫じゃらしで遊んでくれた。



それも全部立樹のおかげなのかな。



そんな事をかんがえながら僕は綺麗に輝いている月を見る



よく見ると月は手毬に似ている。



黄色と白の手毬と似ててすごく綺麗。



僕は廊下に行って箱の中にたくさん入っている手毬から月に似てる手毬を探す。



その中には黒や緑と不思議な色もあった。



でも黄色は無くて手毬が置いてある廊下の棚から黄色の手毬を探す。



すると一番月に似た手毬を見つけた。



ちょっと濃い黄色と薄いレモン色のグラデーションの手毬だった。



僕は近くに積み重なっている本を上手く使って登る。



僕の身長では届かない三段目の所にその手毬はあった。



お店の棚より低いところにあってすぐに登れた。



僕はその手毬を棚からころがして落とす。



すると手毬は落ちて廊下をコロコロ転がっていく



僕は棚から降りてその手毬を頭で押しながらリビングに戻る。



立樹はまだお皿洗いをしてた。



きっと後で僕の所に来てくれるから窓際まで僕は手毬を運んでいく。



やっぱり手毬と月は似ていて僕は月で遊んでいる気分になった。



大きさは僕と同じくらいで結構大きな手毬だった。



小さい手毬とは違って上手く転がせないけど僕は見てるだけでも面白かった。



月が僕の家にもあるみたいで不思議な気分だった。

「藍くん。なにしてるんだい?」



そう言って僕の隣に腰を下ろす。



僕の隣にある手毬をみて立樹は首を傾げる。



「またイタズラしたのかい?廊下の棚から出してきたんだろう?」



僕はその通りだと言いたくて「ゥニャー」と鳴く。



「うーん…藍くんが持ってきたならきっと意味があるんだよね。黄色と白のグラデーションの紀州手毬…あ。」



わかったのか窓の方に手毬をかざす。



「月だ。月に似てたから持ってきたんだろう?」



立樹わかってくれた!



僕は立樹の膝の上に乗っかって月と月の横にある手毬を交互に見る。



「確かに似てるね。藍くんは本当に手毬が好きなんだねぇ。」



僕は立樹の膝の上で丸くなる。



何故か立樹といると凄く落ち着くんだ。



「藍くんも手毬みたいに丸まって…眠いのかな?」



時間はわからないけど短い針が9の近くをさしてて長い針が5の所をさしていた。



僕は夜の方が動けるはずなのにもう瞼が重い



立樹の膝の上は暖かくて落ち着く。



それに立樹が僕の体を優しく撫でてくれる。



瞼も重くなり目の前はどんどん暗くなっていく。



僕の体を優しく撫でてくれる暖かい手は僕の事を抱えて僕がいつも寝るクッションの上に乗せてくれた。



でももう眠くて仕方ないや…



僕はそのまま眠りについた。


だいぶ風も冷たくなってきて外の木も紅く色づいてきた頃。



商店街ではよくたくさんのかぼちゃを見るようになった。



お花やさん。八百屋さん。そして優しいおばちゃんがいる橘商店にはたくさんのかぼちゃが並んでた。



手毬も今日午前中売れたのをずっとみてると黒やオレンジの手毬が人気だ。



そういえば立樹は最近よく縫い物をしてる。



黒い布とか青い布とか黄緑の布とかを使って縫ってる。



何があるのか僕は知らないしカレンダーを見ても日付がわからない。



「藍くん。カレンダーなんかみてどうしたんだい?」



「にゃー」と鳴いても立樹に猫語はわからない。



さすがに日付が知りたいって言ってもわからないよね…



「あ、そうだ。藍くん。ちょっとおつかい行ってきてくれるかな。僕今手が離せなくて。」



おつかい…?



僕は首を傾げる。



「おばちゃんのお店にいって来てほしいんだ。近くだから道覚えてるでしょ?」



道は覚えてるけど僕が話してもおばちゃんわかってくれないし…



そんなことを考えていると立樹はグレーに少し黄緑が混ざったお財布を出した。



その中に小さなメモと金色のまるいやつを入れた。



「おばちゃんにこれを渡して。そしたらおばちゃんが渡してくれると思うから。」



そういって僕がくわえられるようにちょっと短めの紐を付けてくれた。



「あ、あとこれつけていって。持ち帰る時に楽になるだろう?」



そういって青い小さなリュックを出した。



僕にはぴったりのサイズでつけると丁度いい。



「これで持って帰ってこれるかな。じゃあお願いするよ。」



そういって頭を撫でてくれる。



「気をつけてね!暗くなる前に帰るんだよ!」



そういって立樹はお店の方にに戻っていった。



僕はお店から外に出て橘商店に向かう。



外の風は冷たくて冬が迫っていることがよくわかった。



僕はゆっくり歩きながらお店に向かう。



最近よく立樹とお店まわってたからか商店街の人達みんなが挨拶してくれたり撫でたりしてくれる。



昔の僕じゃ考えられなかった事だった。



風は冷たくて寒いはずなのに凄く暖かかった。



僕は少しだけ落ち葉で遊んだりしながら向かった。



そしてお店に着く。



いざ着くと緊張するなぁ…いつも立樹が居てくれたから。



僕はおばちゃんに気づいてもらえるように「にゃー!」と大きな声で鳴いた。



「あら?立樹君の所の猫の…たしか藍くんじゃない!逃げ出して来ちゃったのかな?」



逃げ出してないよ!



僕は伝わるように首を横に振る。



「でも藍くん1人…一匹で来るなんてどうしたのかしら?もしかしてネコ缶欲しいの?」



僕はおばちゃんの足元に口にくわえていた財布を置く。


「この財布…わかった!立樹君におつかいを頼まれたのね!」



よかったわかってくれた!



僕は「にゃー」と鳴いてあってる事を教える。



「よくまぁ一匹でここまで来たわねぇ!藍くんは偉い!」



そういって僕の頭を撫でてくれる。



おばちゃんは僕の背負っていたリュックを外してくれてその中に色々なものを入れてくれる。



「おつりはこの財布の中に入れておくからちゃんと立樹君にわたすのよ!」



そういって僕のリュックの中に財布を入れてくれる。



「それから!藍くんが好きかわからないけど猫ちゃんようのカリカリも入れといてあげる。お使い頑張っているご褒美よ?」



そういって小さい袋も入れてくれた。



そして僕の背中に背負わせてくれる。



「藍くん大丈夫?重くないかしら?」



僕は大丈夫という意味をこめて「にゃー」と鳴く。



ちょっと重くなったリュックだけどこれくらいならすぐ持って帰れる!



「藍くんは力持ちねぇ!頑張ってお家まで持っていってね!あと立樹君によろしくね!」



そういって僕を見送ってくれた。



周りをみるといつの間にか日が傾き始めていた。



風もさっきより冷たくなっている。



周りをみてるとさっきまで置いてあったかぼちゃが不気味に光っている。



ちょっと怖いなぁ…



僕は少し早歩きで立樹のお店に向かった。



立樹のお店に着くと電気は消えてた。



まだお店終わってないはずなんだけど…



僕は家の中を探してから裏のお店の方に行く。



だ…誰もいないわけな…



「Trick or Treat!いたずらするぞー!」



突然目の前にマントを羽織った吸血鬼みたいなやつが出てきた



僕はびっくりしてお店のはじに逃げる。



「あははっ!そこまでびっくりしないでよ!僕だよ藍くん。立樹だよ。」



そういって電気をつける。



暗い中だとわからなかったけど立樹だった。



僕は夜の方が目がいいはずなのに…焦りすぎてたのかな…



「大丈夫。何もしないから僕と一定の距離を取らないでよ…」



怖くてつい立樹から逃げていたらしい…



でもさすがに驚くって…



「怖がらせすぎちゃった…かな?ごめんよ藍くん。」



そういって僕を撫でてくれる。



あ、いつもの立樹だ。



「あ、おばちゃんのお店行けた?色々貰ってきたと思うけど…」



そういって僕の背負っていたリュックを外してくれる。



「えーっと…かぼちゃに黒いシール。それから帽子のピン…よし。これで準備完了。おばちゃん…サービスまでしてくれてるよ。」



僕は状況がわからず首を傾げる。



「さて!じゃあ僕らも用意しようか!」



そういって小さなマントや色々なものを出してくる。



これからなにするんだろう…