商店街は真っ白に染まってきた頃。


木の上にはこんもりと雪が乗っかっていて今にも落っこちてきそう。


いつもいるお客さんも少ない。


けれどそんな店の前には…


店の目の前にはかまくらができてる。


そこが今の僕のお気に入り。


まれに溶けて屋根がなくなるけど。


部屋の奥には小さめのかまくらが出来ててそこにはロウソクがたっていて火がついてる。


それだけだけど凄くあったかいんだ。


床はビニールシートの上にカーペットが敷かれていて快適。


全部立樹が作ってくれたんだ。


あったかくてこたつの中みたい。


これまでの冬は寒かったけど今は凄く暖かい。


多分それは普通に暖かいだけじゃなくて…


「藍くん。お客様だよ。」


そう呼ばれて僕はかまくらから出る。


店の中には白や水色の手毬が沢山。


雪の結晶みたいだ。


僕は雪の結晶は見た事がないんだけど…でもこんな感じなのかなっておもうんだ。


僕はお客さんの前に来て「いらっしゃいませー」と鳴く。


ご注文はいかがでしょうか?って聞きたいけど猫語はわからないもんなぁ。


「当店の看板猫君がおすすめの手毬を選んでくれますよ。」


そう言って立樹は頭を撫でてくれる。


今日のお客さんは身長が立樹より高い大きい人。


お店の棚と同じくらい。


凄く無口な人で僕にお辞儀だけをした。


立樹曰く冬らしい物がいいみたい。


誰かへのプレゼントなんだって。


クリスマスの時には人が多かったけど…


この時期にプレゼントって珍しいな。


雪の結晶だらけの…雪の結晶みたいな手毬だらけの店の中で冬らしい物はとても難しい。


水色や白ばかりなわけでも無いけど。


赤白のかまぼこみたいな色とか…


薄い…えっと…ぱすてるからー?のやつとか…


ど、どうしよ…


…みかんの色?


僕はみかん食べれないけど。


僕は棚に上りオレンジ色のものを探すけど…どれも派手だった。


ほかはちょっと冷たそうな雪の色が多かった。


うーん…


僕は今さっき見つけたオレンジの菊手毬を前足で蹴る。


うーん…でも僕の中で気に入らないな〜…


僕は他のを探してみる。


棚をくるくる周り、棚の下にあるダンボールの中の物も漁る。


漁っていたらダンボールの中に落ちた。


手毬に埋もれるのなんか落ち着くなぁ…ってそんな場合じゃない!


1人でニャーニャー鳴いているようにしか聞こえないから…いいのかな?


するとそのダンボールの中に1つ冬らしいものがあった。