「毎回、いろんな方法で王を決めているとは聞くが、今回は皆、意表をつかれたようだな」
「現王は勘の良さを先王に認められて王になったと噂で聞きましたけどね」
「さすが『賭博の国』といったところか」
「そうですね」
 クスイは小国ながら王都は栄えていた。
 それは一攫千金を求めて各国から人が集まってくるからだ。
 賭博の国。
 合法的に国が管理した賭博が日常に行われているのだ。
 様々な遊戯施設が存在し認められている。
 しかし国の利益として入るのは掛金ではなく、訪れる客の宿や食事といったサービス業のみ。掛け金は全額遊戯者へ還金される。
 悪質な賭博を行った者は厳重な罪として処されるので、遊びに来る者も安心して遊べる環境が整っていた。
 そんなクスイの国では遊び心や賭けの勝負を楽しむという、国民性が根付いていた。
「王もコレをするために子供の存在を隠していたのかな?」
「・・・あの王ならありえるかもしれませんね」
 気軽に王の事を話題として話せるのは親しみを持ってる証拠だ。
 1か月の間に、王から王子に関するいくつかの情報を臣下たちは聞き出していた。
 成人した男性であること。
 王都に住んでいること。
 たくさんの噂話が飛び交うが、確実な情報をつかみどう行動していくのかも、王宮に務める官吏たちのいろんな実力を知るいい機会。
「で、クーデノムはもう決めたのか? 誰を王に選ぶのか」
「・・・いえ」
「突然、誰かを選べなんてなぁ」
 ソファでくつろぎながら、それでもちょっと楽しそうではあるマキセ。
「また何で俺が選ぶのか・・・」
 苦笑交じりでぼやくクーデノムに笑いながら、それでも目は本気でマキセは言う。
「それは王から信頼してもらってるからだろ」
「信頼? 押付けのような気もするが…」
「今までの仕事でも、無理難題をきちんとこなしているからこそじゃないか」
「誉めてもコレ以外は何もでないよ」
「あはははは 今日はコレだけで我慢するよ」
 果実酒の入ったグラスを軽く持ち上げカチンとぶつけると、二人は喉を潤した。