またも不意をつかれ、慌てて振り返る。

ていうか、業務中に彼氏とメールって、許されるのか?

自分が、馬鹿に真面目なだけなのか?

すると、森緒ちゃんは、ちょっと待ってまって、と自分の腕を引っ張り、突然スマートフォンを弄り出す。

しばらく棒立ちで待っていると、勢いよくスマートフォンの画面を自分に見せ付けた。



「はい、ダーリンですっ!やんっ、恥ずかちー!!」



はしゃぎ気味に言った一言と共に目の前に現れたのは、少しばかり異様な写真だった。

ものすごく、そして恐ろしい程に筋肉質な男性が、上半身裸で写っている。

しかし、タレントなどではないらしかった。

自撮りの様で、彼の腕にご機嫌で抱き着く森緒ちゃんの姿が。

その背景は、アパートの一室という感じで、画面の角には鍋料理が見える。

―なるほど、だから彼は脱いでいるのか。

いや、食いつくところも、何もかも違うか。

思わず失笑…苦笑…とにかくそんな何とも言えない笑いが込み上げた。



「すごいね…」

「やろ!今度、華も一緒に遊ぼうよ!角野さん誘ってさ。ダブルデート!!」

「う」

「あんたら、何しとんの?」

「わあ!」

「も、申し訳ありませんっ!!」



女性の先輩に注意され、二人して背筋を伸ばしながら、驚いた。

じゃ、また後で、と森緒ちゃんが手を上げてくれたので「うん」と返して、やっと慌ててデスクに戻った。


それにしても、さっきの写真の彼には、正直会いたいとは思えなかった。

森緒ちゃんには、悪いけど。

だって、もし会ったら、第一声はどうやって挨拶したらいいの。

着ぐるみさんと話すノリになってしまいそう。

でも、会ったら会ったで、面白いかもしれない。

まあ、そんなことはどうでもいい。