当然のことだけど、森緒ちゃんは、決まった自分のデスクに座っていた。

しかし、不思議なことに俯いている。

静かに近寄ると、スマートフォンを弄っていた。

どうやら、無料音声通話が可能なアプリケーションで、誰かとメッセージのやり取りをしているらしかった。

こちらには一切気づかずに、それどころか、少し幸せそうな笑みを浮かべている。

あまりのぞき見てはいけない、と横に立ち位置を変え、そっと声をかけた。



「森緒ちゃん、あの…」

「ん?お、華。どうした?」



森緒ちゃんは、扱っていたスマートフォンを机の上に置くと、落ち着いた面持ちで、椅子ごと振り向いてくれた。

自分は、先程の用紙を差し出した。



「あの、これ。納品書なんやけど、こっちに混ざっとったから」

「おお、ごめんなー。ありがと」

「いえいえ」



自分が返事した直後に、机に置いた森緒ちゃんのスマートフォンが震えた。

不意打ちに驚き、思わず視線がいってしまった。

すぐに視線を森緒ちゃんへと戻し、じゃあ、と自分の席に戻ろうとした。



「彼氏からなん…!」

「え」