「まあ、そういう感じの昔の天敵に再会してしまって…
ここ最近ずっと、電車に乗るのが、怖いと感じてしまう、ってそういう話です」
とりあえず簡単ではあったが、言いたかったことは、これで終わりだ。
しかし、まだすっきりはしきっていない。
明らかに不完全燃焼だ。
相談しろ、とは言われても、心中にある形無いものを全て言葉にするのは、意外と難しい。
自分のこんな薄い内容の、拙い説明では、困ってしまうだろうと、先輩の方を見てみた。
すると、先輩は頬杖をついた体勢から、背もたれにもたれ直す。
心なしか背筋をぴんっ、と伸ばしている様に見えた。
その時の表情は、何かを考え込んでいる様だった。
「つまり、華ちゃんはやっぱ、俺に隠し事をしとった、ってことなんやな」
「うっ、すいません…でも、明らかにこれは私事なので、話すのはどうなんだろう、と思いまして」
「あのな、困ったことがあるんやったら言ってよ。それで仕事に差し障っても困るし」
「だ、大丈夫です。別に、今に始まったことではないですし…」
「いや、それ大丈夫っちゃうやん!!話聞いとると、それ犯罪に巻き込まれかけてない?!」
「いや、そんな大袈裟な…」