「その電車の中で、昔にいろいろあった知り合いと遭遇してしまって、何というか…痴漢まがいのことをされて…」
「知り合いって、男なん?!てか、痴漢まがいって…何されたん?!!」
「少し触られたくらいです」
「どこを?!」
「足…付近です…」
「なっ、それ、まがいっちゃうやん、痴漢やん!!」
テーブルにドンッと手をつき、身を乗り出す先輩に圧倒されて、自分は少しのけ反る。
周りの視線が、全てこちらに集まった。
先輩は、んはー、と大きくため息をつきながら、椅子に座り直した。
「そんなけ華ちゃんが悩まされるって、相当悪い奴なんやな、そいつ。そもそも、公共の場で平気でそんなん出来るとか…考えられやんし」
「はい…非情な人間だと思ってます、自分は」
でも、これって自分も人のこと言えないじゃないか。
散々、自分だって、非情の塊だったのに。