行くぞと叫んで始まった彼らは今まで以上に楽しんでいた。そうか、これが自分の手から離れていくって事なんだな。まだまだガキだと思っていたけれど、それは俺の方だったんだ。
まだ手放したくないと無理に千里を横に置いておいたのは俺だったんだ。俺が無理に引き止めていたんだ。俺の勝手な我が儘で千里を縛っていたんだ。
その日の夜、俺は仕事が終わっても家に帰る気にはなれなかった。だって、家の隣には千里の祖父母の家があってそこに千里も暮らしている。見える所にいると考えるだけで気が少し重たくなったんだ。

「えっ・・・?」

俺は思わず目を見開いた。いないはずの千里がいつもの浜辺に座って夜風を浴びていたんだ。会いたくなくてここに来たのに会ってしまったら意味がない。なんでここにいるんだよ。

「あっ、柏崎先生。返信くれないから心配しました」