知ったような事言いやがって。面白くなさそうな表情をして俺の隣から去っていく担任。別の高校へ飛ばされてくれないかと切に願うよ。俺が腹立って仕方ない。

「実は、お前らに話があんだ」

最後の一曲に入る前に健が口を開いた。しかし、それは観客の生徒や教師ではなく吹奏楽部の皆に向けられていた。俺も不思議で目の合った千里と一緒に首をかしげていると、理由が分かった。

「お前たちが良いなら卒業してもこうして集まりたい。仕事や学業に影響しない程度に声がかかったらこうやって顔を合わせてステージに立ちたい。良いか?」

何度も頷く千里に親指を立てる叶多と陽翔。よろしくと頭を下げる隼人。
そうか。千里にはもう、仲間や友達がいるんだな。転入してきた頃とは違って、もう俺がいなくても平気なんだもんな。実家で雇うとは言ったけど、余計なお節介だったのかもしれないな。