「私もあげます」

何となく。一応、私の我が儘に付き合ってくれているお礼がしたかった。これが体目的でしている事であっても、我が儘を聞いてくれている事には変わりない。だから、夜に祖父母と食べるために作ったクリスマスケーキの残った材料で小さなケーキを数個、作って持ってきていたのだ。

「いただきまーす」

「いただきます。・・・、温かい・・・」

「・・・ん、うめぇ!」

私はココアの缶を、柏崎先生はケーキの入った箱を開けて口の中に入れた。柏崎先生がくれたココアは気温で冷たくなってしまった体に染み渡るほど温かくて、忘れかけていた人の温もりの味がした。
柏崎先生はケーキをそのまま手で持って食べると口許の八重歯を輝かせて美味しいと笑顔で食べてくれていた。少しだけ、平和だった昔を思い出せた気がする。